当団体において行った、 助成事業におけるリスクマネジメントに関する実態調査によれば、助成先団体選定時に最も回避したいリスクとして、「助成期間終了後に当該事業が継続しないこと」をあげた団体は全体の35%に上りました。
そこでこのリスクを回避するために、本記事では、助成団体として助成期間中に持ち合わせておきたい視点について、JANPIA様にて、各団体から提出されたフォローアップ調査結果をひも解いていただきました。
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助成終了後も望む形で取組を続けるために
助成事業は、一定の期間内に人・モノ・カネ・時間を活用し、あらかじめ定められた成果の達成を目指します。一方、社会課題に取り組む団体にとっては、その取組みは「助成期間中だけ実施するもの」ではなく、ビジョンやミッションの実現に向けた道のりの一部として位置付けられていることが多いです。
このため、助成終了後も取組みを望む形で続けていけるよう、助成期間中から、終了時にどのような状態に到達していたいかを具体的に見据えておくことが重要です。
助成終了後の取組みの継続状況
休眠預金等活用事業の指定活用団体であるJANPIAでは、2024年から、助成事業の通常枠を終了した全実行団体を対象に、助成終了後の状況を把握するフォローアップ調査を実施しています。
2025年の調査では、241事業から回答があり、有効回答率は71%でした。回答した団体の97%が、助成終了後も取組を継続していると答えています。継続している団体のうち、44%に当たる106事業は、取組みが「拡大・発展している」と回答しました。
一方、取組みを実施していないとの回答は6事業、全体の3%でした。このうち3事業は、行政や関係団体に取組を移管したことで、団体自身が実施する必要がなくなったものです。残る3事業は、財源を確保できず、継続が困難になっていました。
ただし、財源を確保できれば、必ず望む形で取組みを続けられるわけではありません。調査後のヒアリングでは、行政等から業務を受託したものの、契約上の制約によって団体内の人員や資金を柔軟に配分できず、活動が制限されたという声がありました。また、制度化によって支援対象者の範囲が狭くなったという例も聞かれました。
助成終了後に想定すべきリスクは、単に「資金がなくなり、事業が終わること」だけではありません。財源を確保して事業が継続していても、対象者、支援方法、事業の質など、団体が大切にしてきたものを維持できない可能性があります。
実行団体の助成終了後の活動の状況
(出所:2025年度総合評価, JANPIA)
助成期間中に何を残すのか
JANPIAが資金分配団体のプログラム・オフィサーを対象に実施する研修では、助成終了後を見据えた持続化戦略、いわゆる出口戦略を扱っています。助成期間中には、より良い事業を創っていくこと、その結果として成果を生み、終了後の財源を確保していくことが重要です。しかし、活動の継続を支えるのは資金だけではありません。例えば、次のようなものがあります。
・課題やニーズを俯瞰するデータと知見
・事業を支える関係者との信頼関係
・実践をつうじて蓄積されたノウハウの共有
・事業を担い、次に繋ぐ人材
・関係者が協力して課題に取り組む仕組み
これらは、事業の短期アウトカムとして設定されていないと可視化されにくいものの、助成終了後に取組みの継続や発展を支える重要な基盤となる力です。関係者とのつながりを豊かにしていくこと、ノウハウを可視化し蓄積すること、人を育てていくことで、事業を応援する人や団体が増え、支援の質も高まっていきます。支援の質の向上はより良い成果につながり、新たな資金や人材との接点を生み、次の展開につながることもあります。
以下では、助成期間中にこうした基盤を形成し、助成終了後の展開につなげた事例を紹介します。
事例1:多様な担い手をつなぎ、全国組織と活動しやすい環境を作った事例
全国再非行防止ネットワーク協議会が2020年3月から2023年3月まで実施した「罪を犯した青少年の社会的居場所全国連携拡充事業」(資金分配団体:更生保護法人日本更生保護協会)では、地元に戻ることが難しい青少年や、地元を離れて立ち直ることを希望する青少年を支えるため、その受け皿となる全国の自立準備ホームをつなぐ取組みが行われました。
自立準備ホームの運営主体は、高齢者福祉、障がい者福祉、児童福祉、ホームレス支援、依存症回復等の施設、ホテル業、不動産業など多岐にわたります。背景や専門領域が異なる上、各事業所の情報は公開されておらず、事業者同士が互いの活動や支援方法を知り、課題を共有する機会は限られていました。
そこで、全国再非行防止ネットワーク協議会では、全国の事業者を対象とした実態調査を行い、それぞれが抱える課題や支援ニーズを可視化しました。さらに、全国各地で勉強会や研修会を開催し、延べ246人、119団体が参加しています。こうした場を通じて、これまで接点の少なかった事業者同士が出会い、それぞれの実践や課題を共有し、相互に学び合う関係が形成されました。また、法務省との意見交換を重ねる中で、本事業だけの働きによるものではないものの、委託費の増額が実現したほか、勉強会・研修会の会場費の負担軽減や、個々の事業者情報の公表など、現場の活動を支える制度・運用面の改善もみられました。また、こうしたプロセスを経て、法務省保護局の全面的な支援を受け、事業者、支援者、専門家が連携し、全国組織「日本自立準備ホーム協議会」の設立に至りました。
助成終了後も、全国の自立準備ホーム事業者が連携し、地元に戻ることが難しい人や、地元を離れて立ち直りを希望する人に、県域を越えて安心できる住まいと支援につなぐ取組みを続けています。また各事業者の自立支援の力を向上させる取組みや法務省との意見交換の取組も行われています。
事例2:当事者や地域の認識を変え、応援者を増やし、取組の発展につながった事例
株式会社ハブクリエイトが2020年5月から2023年3月まで実施した「八重山・離島の子ども派遣基金事業」(資金分配団体:公益財団法人みらいファンド沖縄)では、離島に暮らす子どもたちが、住む場所によって島外での活動や体験の機会を制限され、人権が守られていない不平等な状態を社会課題として捉えました。
八重山地域の子どもたちは、県大会に参加する場合にも航空機による移動や宿泊が必要となり、多額の費用がかかります。その費用の多くを家庭が負担し、父母会も資金造成活動によって支えていましたが、経済的な理由から部活動への入部をためらったり、遠征への参加を諦めたりする子どももいました。そこで本事業では、子どもの部活動等(運動系に限らず、文化・芸術系の部活動や学童、地域のスポーツチームなども対象)の派遣費用を補助するとともに、派遣に伴う負担の実態を明らかにし、行政や企業など地域の多様な関係者と課題を共有しながら、地域全体で支える仕組みをつくることを目指しました。
実態調査は、地域の子ども、保護者、指導者等840名超を対象として実施され、課題とニーズを明らかにしました。その調査結果は円卓会議をとおして父母会の当事者だけでなく、市議会議員、教育委員会、航空会社職員などに共有され、課題に関わる人の裾野を広げました。こうした取組により課題に対する共通認識の形成が地域で進み、子どもの活動を地域で支える仕組みとして、また日頃の活動の成果を発表する機会を一体化するために「島の子ども応援まつり実行委員会」を、父母ら有志と事業期間中に立ち上げました。
「島の子ども応援まつり実行委員会」は助成終了後も課題解決を担う主体として、助成終了した2023年5月に第一回のお祭りを開催し、石垣市長へ児童生徒の部活動等派遣費補助拡大の要望書を提出しました。その後もまつりは毎年開催され、2026年には約1万1000人(石垣島の人口が約5万人)が来場し、父母会などの出店の売り上げが約1300万円を達成し、一般財団法人地域活性化センターが主催する「第30回ふるさとイベント大賞」の「ふるさとキラリ賞」に選ばれています。
まとめ
二つの事例に共通するのは、助成期間中に直接的な支援活動を実施しただけではなく、助成終了後にも残る基盤をつくったことです。
全国再非行防止ネットワーク協議会の事例では、実態調査によって課題を明らかにし、勉強会・研修会によって全国の事業者をつなぎ、官民の対話を重ねました。その結果、助成終了後も活動を担う全国組織と、事業者同士が学び合う仕組みが残りました。
ハブクリエイトの事例では、派遣費用の負担をデータによって可視化し、その結果を地域の多様な関係者と共有しました。その過程で、課題を応援する人だけでなく、資金造成や行政への働きかけを担う新たな主体が生まれました。
(執筆:JANPIA助成事業部 根尾智子)
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以上、JANPIA様より、助成期間後も事業が継続した例として、2つの事例を紐解いていただきました。特に助成事業期間中にどのような「無形資産」を蓄積していくのかあらかじめ想定をしておくことで、助成期間終了後も当該事業が継続しないリスクを下げることができるといえそうです。
ぜひ、今後の取組の参考にしていただければ幸いです。

