この記事では、よく予防策や体制構築が求められる事項について、リスクマネジメントの観点から分析し、具体的な対応策を検討します。今回のテーマは「助成金管理」です。

リスクを検討するときには単に「助成金管理」と抽象的に考えるのではなく、助成金管理の不備が起きたら具体的に団体にどのような影響があるかという点までセットで考えることが重要です。本記事では、団体として、これらのリスクをどのように見積もり、どのように防止策を講じるべきか、どのような費用がかかるのか、検討していきます。

 

Ⅰ. 初めに

 助成金は、非営利団体にとって非常に重要な資金調達の手段の一つです。助成金の管理がしっかりできるようになることで、さらに活動の幅を広げることができます。また、多くの助成金は、資金を全て使用しなかった場合、助成金を返還しなければなりません。どうしても団体として「助成金を使い切りたい」という気持ちが強くなりがちですが、十分に管理ができていない場合、助成期間終了の直前で計画性なく支出をすることになります。しかし、そのような支出は、有効な活用につながらない上、十分助成の目的との整合性が検討されない結果、不正な支出とされるリスクも高まり非常に危険です。

 他方で、多寡や資金の出し手の性質によってどこまで管理が必要になるのか変わってきます。具体的にどのように助成金を管理しなければならないのかは、契約等で決められていることが多いと思われますが(別口座での管理が必要か、証憑類の提出、科目別の流用の可否等)、本稿では、主に金額面に着目して管理レベルの整理をしたいと思います。

 

Ⅱ. リスクの評価

Ⅱ.1. 影響度

 助成金管理ができないと、そもそも助成金の対象となる経費として認められず、自己資金での計上をしなければならなかったり、「不正利用」として契約違反とされ、助成金の返還を求められるリスクもあります。また、助成金を最後資金として有効活用できないということもリスクになります。

 他方、このリスクの影響度は、助成金でどのような事業をしているかによって変わってきます。

 

【影響度が中~大となる場合】

 団体の中枢的な事業を助成金で行っている場合は、例えば助成金の返金が求められると団体の存続にもかかわることになり、影響は大と言えます。また、適切に助成金の管理ができていない場合、「助成金管理ができない団体」という評価を受けてしまうこととなりますので、今後も助成金を主要な財源として考えている場合には、その後の資金調達にも強く影響することから、さらに影響度は大きくなるでしょう。

 

【影響度が小~中となる場合】

 他方、事業に必要な費用の一部に補助的に助成金を利用している場合で、今後助成金の活用を考えていないのであれば、たとえ返金であっても団体の活動に与える影響は小さいと言えます。

 ただし、一部の経費を助成金の対象として認められないことを超えて、「不正利用」とされた場合には、その事実について公表されるリスクもありますので、信頼をベースとして活動をしている非営利団体にとって「中」以上のリスクにはなることには注意が必要です。

 

Ⅱ.2. 発生可能性

【発生可能性が中~大となる場合】

 助成金額が大きく(数十万円~数百万円以上)の場合、経理体制を構築していない場合に発生可能性が大きいと言えます(経理体制の構築については「経理体制をリスクマネジメントから考える」もご参照ください)。特に支出に関して複数名でチェックする体制ができていない場合(助成金を活用して団体を成長させようとしている場合)には、発生可能性は高いと言えます。

 また、公的な資金を資金源とする助成の場合には、厳しい管理体制が求められることが多いので、その分発生可能性も高まるでしょう。

 

【発生可能性が小~中となる場合】

 他方、少額の助成を得る場合には、ある程度担当者レベルで認識できる範囲の支出の量になると思われますので、担当者が明確にされ、今まで適切に決算等の書類が作成できているのであれば、発生可能性は小~中といえます。

 また、民間の資金を資金源とする助成の場合には、その支出をした会社・個人の意向により、必ずしも厳格な使途制限を課していないことも多く、その分、不正な資金利用とされる可能性も低くなると考えられます。

 

Ⅲ 具体的な対策

助成金管理に伴うリスクへの対策を検討する際、すべてのケースにおいて一律に厳格なシステムやプロセスを導入しなければならないわけではありません。過剰な管理体制は、かえって現場のスタッフの負担を増やし、本来の活動を停滞させてしまう原因にもなりえます。

重要なのは、求められる報告の厳格さに応じて、自団体に適した管理レベルを選択することです。ここでは、具体的な運用イメージを3つのレベルに分けて解説します。

 

Ⅲ.1. 管理レベル1:金額の報告のみ

【主な対象】

・少額の助成金(例:数万〜数十万円程度)

・使途の制限が比較的緩やかな民間財団の助成金

助成金の使い道に関して「いくら使ったか」という総額の報告が主たる義務となる、最も手続のハードルが低いケースです。基本的に、精算時に領収書などの証憑(しょうひょう:支出を証明する書類)を提出する必要がないため、事務負担は極めて軽いです。しかし、提出不要だからといって、管理を疎かにしてよいわけではありません。

実務上は以下の2点を考慮する必要があります。

  • 証憑の保存

助成元からの事後監査や突発的な確認要請があった際に、いつでも「適正に使った証拠」を提示できるよう、領収書はフォルダにまとめるなどして適正に保管します。法律や規約で定められた期間(一般的には5〜7年間)は、確実に手元に残しておかなければなりません。

  • 簡易的な使途明細の作成

会計上の記帳とあわせて、当該助成金に紐づく費用の簡易的な使途明細をExcelシートなどで作成しておきます。これがあるだけで、期末の金額報告が劇的にスムーズになります。

 

Ⅲ.2. 管理レベル2:金額の報告・証憑の提出が必要(通常会計+α)

【主な対象】

・中規模の助成金(例:数十万〜数百万円程度)

・一般的な民間財団の事業助成金、使途特定寄付金など

 

金額の報告だけでなく、その支出が本当に事業のために使われたのかを証明する証憑(領収書等)の現物、または写しを全て提出するレベルです。団体において基本的な会計処理がしっかり回っていることが前提となり、そこに「助成金用の区分け」というプラスアルファの作業が加わります。

具体的には、以下のような管理が必要です。

  • 費用の「紐付け」の即時徹底(後回しにしない)

領収書や請求書が発生したら、即時に「〇〇助成事業」とメモを書いたり、専用のフォルダに仕分けたりするルールを徹底します。期末にまとめてやろうとすると、「この領収書は通常活動のものか、助成事業のものか」の判別が難しくなり、返還リスクや報告遅延を招く原因になります。

  • 会計ソフト入力時の判別フラグの活用

助成金管理のために、新しく高価な会計ソフトを導入する必要はありません。現在使っている会計ソフトの中に、助成事業か否かを判別するための「補助科目」や「プロジェクトコード」等を設定します。これにより、団体の通常運営費用と、助成金から支払った費用を明確に区別します。

 

Ⅲ.3. 管理レベル3:予算との厳密な整合が必要(助成金独自の予算管理運用)

【主な対象】

・高額な助成金(例:数百万~数千万円規模)

・複数年度にわたる継続プロジェクト

・国や自治体からの補助金・委託費(公的資金)

 

高額な助成金や公的資金には、「1円のズレや流用も許されない」という極めて高い透明性と厳格さが求められます。レベル2の管理を徹底することは当然として、それに加え、過去の実績を記録するだけではなく、「予算が今どのくらい消化され、残高がいくらあるか」をタイムリーに把握する予算管理機能の構築が不可欠です。  

 

  • 科目別の予算消化状況のタイムリーな把握

通常の会計のフロー(月次会計等)に加えて、「人件費」「旅費交通費」「消耗品費」など、助成決定時に提出した計画書の科目別に、今いくら使って、あといくら残っているかを常に追跡できる仕組みを作ります(具体的には、月次会計で作成した仕訳日記帳を、計画書の科目別に反映させるファイルを作るようなイメージです。)。公的資金では、「旅費が余ったから消耗品費に回そう」といった科目間の流用が原則禁止(または事前の流用承認申請が必要)となるためです。

【サンプル】助成金予算管理シート

 

このように、「科目の枠ごとにいくら残っているか」を月次で把握し、団体間で情報共有を密に行うことが重要です。必要に応じて早い段階で予算の見直しを図ることによって、「気づかないうちに予算オーバーして自腹で補填しなければならなくなった」「予算を使い切れずに直前で困った」というリスクを未然に防ぐことができます。

 

  • 予算や相談先

管理レベル1や管理レベル2の場合には、追加的な費用はあまり生じないと思われます。他方、管理レベル3になると、月次会計との紐づけやその予算の確認等の作業も発生することになります。そのため、会計処理自体は自団体で行うことを前提に助成金管理を外注する場合には、専門家によりますが、月3万円以上の予算を確保することが必要と考えられます。

助成金管理については、税理士や、中小企業診断士等が得意としている分野です。税理士に関するお問い合わせ先は「リスクマネジメントのそのあとに~専門家の活用の提案~」、中小企業診断士への問い合わせは「一般社団法人ソーシャルビジネス・コンサルタントグループ 」のホームページもご参照ください。

 

Ⅳ 最後に

以上、ここまで助成金管理について説明をしてきましたが、最も重要なのは、皆さんが受け取っている助成金でどこまで求められているかです。そのためにも、助成元が作成した資料や契約書等を十分注意して読み込みましょう。

一度管理レベル3までに至れば、(管理面においては)その後助成金を受けられる範囲が非常に広くなります。その意味では、より積極的に資金調達において「攻める」ためにも、ぜひ助成金管理の体制構築についても取り組んでいただければ幸いです。