この記事では、よく規程の整備が求められる事項について、具体的な対応策をリスクマネジメントの観点から分析し、具体的な対応策を検討します。今回のテーマは「反社会的勢力の排除」です。

リスクを検討するときには単に「反社会的勢力の排除」と抽象的に考えるのではなく、反社会的勢力との繋がりが生じてしまった場合、具体的に団体にどのような影響があるかという点までセットで考えることが重要です。本記事では、団体として、反社会的勢力との繋がりのリスクをどのように見積もり、どのように防止策を講じるべきか、検討していきます。

Ⅰ          反社会的勢力とは

反社会的勢力とは、政府による指針<https://www.moj.go.jp/content/000061957.pdf>によりますと、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人」と定義されています。

暴力団(団体の構成員が集団的・常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体)が含まれることはもちろん、暴力団に関係する企業、総会屋といった属性を持つ団体を広く含みます。また、具体的な名称を問わず暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求を行う集団等は全般的に反社会的勢力に該当します。

 

また、反社会的勢力との関与としては、社員、理事、労働者その他のメンバーに反社会的勢力に該当する者が含まれた場合はもちろん、反社会的勢力に資金や便宜を提供すること、反社会的勢力を利用すること、その他取引関係にあること等により、広く関与があるものとして扱われます。相手方が反社会的勢力と知らずに契約をしてしまった場合でも、反社会的勢力との関与のある団体として扱われてしまうおそれのあることに注意しましょう。

 

なお、現在暴力団との関与を具体的に規制する法律はなく、各地方自治体において暴力団排除条例・指針・宣言等がなされている状態です。その一方で、業界・社会全体として、暴力団の排除を目指す動きは強まっています。そのため、特定の行為類型のみが法律によって規制される形ではなく、上記のとおり反社会的勢力や「関与」がかなり広く定義される形になっています。

 

Ⅱ          反社会的勢力と繋がるリスク

次に、反社会的勢力と関与することのリスク分析として、発生可能性及び発生時の影響度を考えましょう。

 

1,発生可能性

現在の日本において、反社会的勢力を社会から徹底的に排除する動きが強まっており、そのため取引先やメンバーがたまたま反社会的勢力である確率が高いことはないと思います。

とはいえ、現時点でも反社会的勢力による活動が途絶えたわけではなく、後述するリスク低減のための対応を取らずに活動をつづけた場合、何らかのタイミングで反社会的勢力との繋がりを持ってしまう可能性は否定できません。

なお、反社会的勢力が引き続き多少なりとも力を有している地域で活動する場合や、反社会的勢力と関与するおそれが比較的高い業種(飲食業、建築業等)に関連する事業を行っている場合には、多少発生可能性が高まるおそれがあります。

 

2,影響度

反社会的勢力と関与した場合の影響としては、以下のような影響が考えられます。

  • 反社会的勢力から不当な要求行為等を受けるリスク:反社会的勢力から、暴力をちらつかせての金銭的要求その他さまざまな脅しを受けるリスクがあります。要求に応じなかった場合には実際に暴力等の手段を講じられるおそれも十分に考えられることから、団体の資金の枯渇、メンバーの心身の危険、その他団体の存続を揺るがすような大きな影響をもたらします。
  • 周囲との取引が不可能となるリスク;周囲から、反社会的勢力と関与している組織として見られた場合、助成金の獲得はもちろん、ほとんどすべての団体・会社との取引が不可能となってしまうおそれがあります。後述のとおり、ほとんどの団体・会社の契約には、反社会的勢力の排除に関する条項(以下「暴排条項」)が含まれており、自団体との契約が相手方の暴排条項に抵触してしまうことから、取引を拒絶されてしまいます。そのため、そもそも他社と何らかの取引をすることすら困難になってしまいます。

 

3,発生可能性と影響度の評価

以上を踏まえますと、リスクの発生可能性及び影響度を3段階で評価する場合、反社会的勢力との関与の発生可能性については基本的に「低」、つまり十分な対策が常時なされている団体においてはほぼリスクとして捉える必要がない程度と考えられる一方で、反社会的勢力と関与してしまった場合の影響度については「高」と言わざるを得ません。

 

Ⅲ          反社会的勢力排除のリスクマネジメント

反社会的勢力排除のためには、自団体のメンバーに万一でも反社会的勢力と関わりのある者が加わらないようにすること、また反社会的勢力と取引をしないことが重要です。そのために、以下の点に留意する必要があります。

  1. メンバーや取引先が反社会的勢力と関与していないことの確認
  2. メンバーや取引先による、反社会的勢力と関与していないことへの誓約

1,メンバーや取引先が反社会的勢力と関与していないことの確認

団体への加入・取引開始の前に、そのメンバーや取引先が反社会的勢力と関わりのないことを確認するための方法としては、①検索プラットフォームでの検索、②専門サービス等の活用、③警察等への照会の3つが主に考えられます。

まず、もっともシンプルな方法は、①Googleをはじめとする検索プラットフォームでそのメンバーの名前を検索することです。名前に「暴力団」「犯罪」等の言葉を加えて検索を行い、過去の事件歴等のニュースを見つけた場合には、そのメンバーが反社会的勢力と関与している可能性があることになります。

もっとも、検索で見つけられるのは公開情報のみで、網羅性としては十分ではありません。また、虚偽の内容が含まれる可能性もあることから、実は反社会的勢力と繋がっているわけではないにもかかわらず関与を疑ってしまう可能性もあります。

リスクの発生可能性の低さにも鑑みて、この部分に資金や労力をかけるほどではない規模の団体が行うべき、最低限の方法としてご認識ください。

 

②次に、です。近年、多数のコンプライアンスチェック用のツールがリリースされています。これらを用いることで、迅速に、かつ通常の検索ではヒットしないような情報も含めて、確認を行うことが可能です。

ただ、これらの利用には当然ながら料金がかかり、また導入のための手間も多少なりとも生じます。一部無料で利用できるサービスもあるようですので、規模が一定拡大したことで検索だけでは不安を覚えた団体については、無料トライアルの活用等も含めてサービスの活用を試みるのが宜しいかと思います。

 

③それから、各地の警察や暴力追放運動推進センター<https://www.zenboutsui.jp/index.html>に照会する方法もあります。警察等の持つ情報網は広範かつ信頼性も高い一方で、確認のためには丁寧な問合せや資料の提供等を求められる場合もあります。全件のチェックはあまりに現実的でなく、たとえば①検索や②サービスの利用で反社会的勢力との関与が疑われる者が現れた場合の確認として用いるのが効率的かと思います。

 

なお、これらの前提として、団体の取引先管理を行うことが重要です。知らない間にメンバーが団体名義で契約を行うことのないよう、契約締結の稟議手続等を定める必要があります(これらについて詳述する記事も今後作成予定です。)。

 

2,メンバーや取引先による、反社会的勢力と関与していないことへの誓約

上記1.の確認を経て問題ないと判断された場合でも、念のため反社会的勢力との関与をしていない旨を誓約させる、あるいは相互に誓約することが重要です。

メンバーを迎え入れる際には、雇用契約書や就業規則等、あるいは入社時に提出させる誓約書等に、暴排条項を盛り込むことが考えられます。万一メンバーが暴排条項に抵触した場合に備え、反社会的勢力との関与を解雇事由として記載するのが宜しいかと思います。

また、取引先との契約でも、必ず暴排条項を盛り込むべきです。非営利団体の話とは少しずれますが、たとえば企業が上場をする際の審査においては、全ての契約に暴排条項が盛り込まれているかのチェックがなされる場合もあるほどです。自団体の契約雛型には必ず暴排条項を盛り込み、かつ他社雛型での契約を行う場合でも暴排条項が盛り込まれているかを必ず確認し、盛り込まれていない場合には追記を依頼するようにしましょう。

3,万一反社会的勢力と関与した場合の対応

上記の施策を行っても、反社会的勢力と関与してしまう可能性が全くなくなるとは言えません。

不運にも反社会的勢力と関与してしまった場合には、すぐに警察に連絡し、適切な指示を仰ぐ必要があります。また、民事的な圧力に関しては、各地域の弁護士会(たとえば東京弁護士会であれば<https://www.toben.or.jp/bengoshi/center/madoguchi/minji.html>)が民事介入暴力被害者救済の窓口等を開設していますので、すぐに相談することをお勧めします。

 

以上のように、万一生じてしまった場合に極めてリスクの大きな反社会的勢力との関与の可能性を最大限抑えることが可能になると考えられます。

(岡田一輝)