弁護士インタビュー④ 仲谷栄一郎弁護士

BLP-Networkメンバーへインタビュー企画第4弾!

今回は大手法律事務所で国際取引・税法の第一人者として活躍されている仲谷栄一郎弁護士に、なぜ弁護士を目指そうと思ったのか、そして、なぜBLP-Networkに参加しようと思ったのか。そのキッカケややりがいについて、じっくりとお話を伺っていきたいと思います。

-今回は宜しくお願いします!
こちらこそ宜しくお願いします。気楽にいきましょう。

-まずは、経歴・専門について教えてください。
現在の専門は「国際取引」と「税法」とでもいいましょうか。
弁護士登録をしたのが1984年ですので、弁護士になってからは30数年になります。

-国際取引と税法を専門にされようと思ったのは、どういったキッカケだったのですか?
国際取引と税法に取り組もうと思い始めたのは、弁護士になって2、3年目のときでした。
私が前にいた事務所が小規模の渉外事務所で、国際取引を広く取り扱っていました。
そのうちに、多くの案件において税金が重要な問題になることがわかり、また、条文が緻密にできていて面白そうだと思うようになりました。さらに、弁護士があまり取り上げていない分野ということもあって、目をつけて、自分でだんだん勉強をしていきました。以降じわじわと専門になっていったという感じです。
税法といっても数字を計算したりするわけではなく、事実認定や法解釈が問題なので弁護士が取り扱うべき分野であるにも関わらず専門家が少なかったので、必ずニーズがあるはずだからやってみようと思いました。

-そうすると、弁護士になろうと思ったきっかけは、また別のところにあったのでしょうか。
そうですね。弁護士になりたいと思ったのは、自分で道を切り拓いていけるところに惹かれたというところでしょうか。
そして、学生時代から漠然とではありますが、国際取引とか企業法務がいいかなぁと思ってはいました。というのも、大学で江頭憲治郎先生の国際取引法ゼミをとっていて、外国の判例を読んだり議論したりすることが面白いと思ったからです。

-学生の頃に抱いていた理想・面白さと、実務での現実の間にギャップはありましたか?
私は幸いなかったですね。ただ、ギャップがあっても柔軟に対応できる態勢をとっておくことが大事だとは思います。
やろうと思った分野がつまらない可能性も、反対にはじめは興味なかった分野でもかじってみたら意外と食わず嫌いだったと気付く可能性もあるわけですので。

-学生の自分たちにとっては、進路を考えるうえで非常に有難いアドバイスです。
先ほどはじめは小規模の事務所にいらしたとおっしゃっていましたが、今の事務所に移られたきっかけは何だったのでしょうか?
それまでいた事務所において、事務所の将来像についての意見が分かれてきて、分裂・解散の危険が大きくなってきました。そのようなときに、ちょうど偶然、今いる事務所から声をかけていただいたのがきっかけでした。
結果的には、今の事務所に入って良かったと思っています。色々な案件に関連して税法の問題が出てくるので、他の弁護士からそれを任せてもらえます。逆に、私の依頼者から独禁法や金商法など専門的な案件のご依頼が来た場合、どんな仕事でも断らずに受けられるようになりました。各分野の専門家がいるおかげですね。この両面で居心地の良い事務所だと思っています。

-先生はご専門をより一層生かしたくて事務所を移られたということですが、国際取引と税法という分野の魅力はどういったところにあるのでしょうか。
国際取引については、外国人との感覚のギャップを楽しめることでしょうか。日本人とは全く違う発想をしてくる相手と対峙すると、あぁそういう読み方・考え方があるのかと気づかされたり、あるいは日本の考え方を文化的違いに遡って説明したりする難しさを楽しむ機会を得られます。
税法は、国際取引と同じ面白さもありますが、さらに、先ほど少し述べましたように、条文がきちんと書き込まれている分、理屈で勝負ができる点に面白みを感じます。

-なるほど。参考までに、これまで取り組まれた案件の中で、何か具体的に印象に残っているものなどはありますか?
そうですね…公開されている案件ですと、国際租税法の裁判ですかね。
背景から申し上げますと、従来から、外国の事業体とくに「パートナーシップ」が日本の税法上、会社なのか組合なのかという議論がありました。法人だとすると、パートナーシップ自体の損失は構成員には関係ないのですが、組合だとすると、組合員がその損失を自らの他の所得と通算して税金を節約することができます。これについては、最近最高裁の判決が出ましたが(最判平成27年7月17日民集第69巻5号1253頁)、それに先立ち、おそらく日本ではじめて、ケイマンのパートナーシップが組合に該当しうると判断した名古屋高裁の判決を受けた件を取り扱いました。勝訴判決を聞いたときは嬉しかったですね。行政事件には和解がないので結論がはっきりし、面白いところでもあり、怖いところでもあります。

-「国際」という要素が加わると面白くなるのですね。
そのとおりです。税金に限らず、国際取引一般も、パズルを解くと言いますか、どう取引を仕組んでいくのかに頭を使うのが魅力だと思います。税法のことにも勿論気を配らなくてはならないですが、外国の依頼者から提案される法概念がそもそも日本では存在しなかったり、あるいは、例えば事業譲渡の方法では行政的な許認可が引き継げなくなってしまったりすることがあり、さまざまな法分野の専門家が集まって議論を重ねて、一番良いストラクチャーを考える面白さがあると思います。

-お話を伺えばうかがうほど引き込まれます!
時間も残り半分になってきました。 今度はBLP-Networkやプロボノ活動についてお話をお伺いしたいと思います。まず、先生がBLP-Networkに参加されたきっかけは何だったのですか?
鬼澤さん(現BLP-Network副代表)が司法試験を受験した直後だった時に、誘ってもらいました。「今度こういう団体を立ち上げようと思っているのですが、興味ありますか?」って。それで、「はい、凄く興味あります。」と。
税法とか企業法務を専門としていると、公益財団法人や一般社団法人を作るといった仕事が来ることがあるのですが、…目的が純粋でない場合があります(苦笑)。例えば、実際の目的は税金対策だったり、会社の支配権の維持だったりするわけです。別にそれら自体を否定はしませんが、心の中でちょっと違うなという感じがありました。
そんなときに、鬼澤さんに声をかけていただいて、鬼澤さんの考えているような支援の仕方ならば、正真正銘の公益目的で素直にお役に立ちたいと思えるような方が集まってくるのではないかと期待したのです。

-そのような経緯で入られたBLP-Networkですが、仲谷先生ご自身はBLP-Networkとどのようにかかわっておられますか?
初期の段階では案件も色々と受けましたけど、今人数も増えてきていますので、若い方々にチャンスをと思って、なるべく口を出さないようにしています。
受ける案件としては、別に税法に限らず何でも引き受けるようにしています。先ほどの税務訴訟勝訴といったようなドラマチックな感じよりも、むしろ淡々と案件に向き合っている感覚ですね。

-淡々と案件に向き合うというお話ですが、BLP-Networkでの業務の取り組み方と、日頃の業務とでは何か違いがあるのでしょうか?
基本的には無いですね。もしもプロボノ(法律家の公益活動)だからと手を抜くのであれば、それはやらない方が良いと思います。
例えば、今プロボノでやっている仕事で、英文のとても分厚い契約書を何年間にもわたって交渉しているものがあるのですが、完全に仕事と同じレベル感を持ってやっています。

-今プロボノという言葉が出ましたが、プロボノ活動に取り組むうえで、事務所の体制は後押ししてくれていると感じますか?
そうですね、私の事務所はプロボノを推進しているので、その点は恵まれていると感じます。
私が入ったときはまだそこまでではなかったのですが、世の中の動きです。特に英米系の事務所はそういうのにすごく熱心なので、日本にもいずれそういう波が来るでしょう。

-BLP-Networkで主に行うNPO支援はまさにプロボノなわけですが、ビジネスローヤーにとって、NPO支援という業務はどういう魅力があるのでしょうか。
企業法務をやっていると、極端な話、人と接しなくても仕事ができてしまうことがあります。依頼者が必死になって訴えてくることも、逆に勝ったからと涙を流してくれるということも、あまりありません。そうすると、弁護士としてもっと依頼者の顔が見える仕事がしたいと思うことがあります。
大きな案件では依頼者個々人との関係が薄い分、広く多くの方々のお役に立つことができ、逆に、個人の依頼者の案件では関係が濃いけれども、影響も大きくないと言えるのではないかと思っています。そして、この「薄く広く」「濃く狭く」のバランスをどのようにとるかだと思います。NPO支援には後者の、依頼者との距離が近い点に魅力を感じます。

-今度はBLP-Networkという団体についてですが、その魅力は、色々な事務所の弁護士が力を合わせるところにもある気がします。
そうですね、普段は競争相手のビジネスローヤーたちが、プロボノということでチームを組んで、案件に取り組む。この方法は参加する弁護士にとってもメリットがあると思います。というのも、同じ事務所内にずっといると、周りの人と考え方が似てくるわけです。それに対して、BLP-Networkには色々な人がいますから、話題や考え方も広いわけです。
そういう面で弁護士にとっては新しい発見をしたり、考え方のバランスをとる機会にしたりしやすい環境だと思います。

-メンバーの先生方は日常業務もある中、BLP-Networkに参加されているわけですが、仲谷先生はBLP-Networkで取り組む案件と、通常業務とのバランスに苦慮することはありませんか?
私の場合は幸いにして無いです。ただ、若手の先生方は苦労しているのではないでしょうか。
日常業務もあって忙しい中、BLP-Networkの案件もやるためにどうやって時間を作っているのか、私も聞いてみたい気はします。
所属する事務所の若手の先生方を見る限りですが、プロボノへの意欲は高い印象です。それは先ほども申し上げた依頼者との距離のバランスであったり、あるいは直接的に社会の役に立ちたい、という気持ちの表れだったりするのかもしれません。

-少し話を未来に向けます。NPO支援の今後の課題はどこにあると感じますか?
プロボノとしてNPO支援を行う弁護士がいることの認知度が低い点はもちろん、そもそもこれが法的に問題となるということの認識、それに弁護士を活用できるという認識がまだあまり広まっていないことが問題ではないでしょうか。
例えば、NPOの方々から見たBLP-Networkの魅力はビジネス法務のスキルが提供される点にあると思いますが、ビジネス法務のスキルの必要性・有用性がまだまだ認識されていないと感じます。ホームページには書いてあるのですが、認識が無い方はそもそもアクセスしてくれず、鶏と卵です(笑)。

-学生の方・若手の弁護士の方に向けて、何かメッセージをお願いします!
納得のいく決断をしてほしいということですかね。何を決断するにしても、根拠のない情報に惑わされないで、自分で経験して、考えて、納得のいく決断をしましょうというのは、常に誰にでも当てはまることだと思います。
多分、仕事をしていれば、やめようと思う瞬間が何度も何度もあると思うのですが、その瞬間に感情だけで「もう駄目だ、やめよう。」ではなくて、色々と考えてから道を決める方が良いのではないかと思います。確かに、感情に従って結論が先に決まっていて、後から理屈をつけてしまうということもあるとは思います。ただ、一応は考えたつもりになる、それなりの理由付けを用意できるようにしておく、ということは大事だと思います。

-内部のメンバーに向けてはどうでしょうか。
あまり気負わず、肩の力を抜いていきましょう、という感じでしょうか。
数値目標などを掲げてプレッシャーをかけていくのではなく、今できる最善のことやっているうちに良い方に行くだろうと思います。神の手に委ねるかのような感覚で。特に今は先が読みにくい時代ですから、5年先10年先といった長期の固いプラン・目標はあまり立てない方がいいと感じます。だからといって近視眼的になってはならないですが。
バランスが大事で、ある程度先は見据えるけれども、納得したうえで方向転換をする柔軟性も持っていることが良いと思います。そのためには視野を狭くしないよう、色々な人と付き合って色々な情報を手に入れて、同時に踊らされることはしないように気を付けて、ということが重要になるのではないかと思います。

-最後に、NPOの方に向けたメッセージをお願いします。
もっとBLP-Networkを知ってほしい、もっと気軽に聞いてほしい、と言いたいところですが、このメッセージがまた届かない(笑)。
気軽に、というのはつまり、このようなことを弁護士に頼んでよいのか、あるいは弁護士に頼むべきなのか迷ったらとにかく聞いてほしい、ということです。
どうしたらいいですかね、また先ほどの議論に戻ってしまいますけれども。

-その点はしっかり考え続けたいです。ありがとうございました!

|2017年12月7日|ブログ|

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