弁護士の渡辺です。今回は「商標登録」について書こうと思います。

ソーシャルベンチャーの立ち上げには、人材の確保、オフィスの確保、会社や法人の設立、労基署・税務署等への届出、ドメインネームの取得など様々なことが必要になりますが、それらと並行して考えなければならないものとして、商標登録があります。

平たく言うと、商標とは、商品やサービス(法律用語では、「役務[えきむ]」といいます)などに使用する名称やロゴマークのことです。例えば、飲み物の名前、宅配サービスの名前、企業のマークなど、身の回りにたくさんの商標が存在します。当然ながら、NPO法人などのソーシャルベンチャーであっても、商品やサービスに特定の名称やロゴマークを使用することができますし、現にそうしている例が多いと思います。

商標を特許庁に登録すると、登録した人には商標権という権利が与えられます。商標権を持つと、その商標を、登録した一定の商品・サービスについて、独占的に使用できることになります。つまり、他人が同じ名前や似たようなロゴマークを使って、同様の商品やサービスを行うことができなくなります。商標登録をした商品・サービスについて、他人が同じ又は似たような名称やロゴマークを使用している場合、その人に対して損害賠償を求めたり、使用の差止めを求めたりすることができます。なお、商標は一旦登録されると登録から10年間存続し、申請すれば更新することができます。

このように、商標を登録すれば、自分の商品について第三者が模倣品を販売したり、似たような名称でサービスを行って自分のブランドにただ乗り(フリーライド)したりすることを防止することができます。また、商標を登録してきちんと権利として保護することで、ブランドの認知度が高まり、ユーザが安心して商品・サービスを享受できるという効果も期待できます。

また、日本以外の国・地域で事業展開をする場合には、その国・地域での商標登録も重要となってきます。

このように、商標を登録することはメリットのあることなのですが、当然ながら、商標登録には相応の費用が掛かります。例えば、1つの名称(又はロゴマーク)を1つのサービス区分(例えば、慈善のための募金(第36類)、飲食物の提供(第42類)など)について登録する場合、出願料として12,000円、登録料として37,600円の費用が掛かります。登録する区分を増やしたり海外に出願したりすると、場合によっては数十万、数百万単位の費用が掛かることもありますし、弁理士に出願を依頼した場合には弁理士の報酬も発生します。

事業の立ち上げ時は、資金的余裕が十分でないことが多く、ブランド保護や将来の紛争予防のために掛ける費用を捻出するのは難しいかもしれません。とはいえ、自分が考えている商品名やロゴを他人に先に商標登録されてしまったり、事業が軌道に乗ってきたところで、他人に似た名前で同じような事業をされてしまったり、という事態は避けなければなりません。

商標=ブランド保護については、事業立ち上げのときから、戦略的に考えておく必要があると思います。そのためには、自身の事業内容についてよく理解し、コスト面も踏まえたアドバイスをしてくれる弁護士・弁理士に相談することをお勧めします。